『教員』が『スクール起業』を考えたら最初にターゲットを決める

スクール経営

 学校と塾では「勉強を教える」というメインの仕事は同じです。そのため、教員が塾で講師に転職したとしてもそれほどのギャップはないでしょう。

しかし、それ以外の細かな部分で仕事の違いがあります。  

教師がスクールを起業しようとすると、どうしても学校では経験できない業務があります。その一つが「集客」です。

教員は何もしなくとも、お客様である生徒は自然に来てくれます。そのため、教員が「集客」を意識することはほとんどありません。学校でも広報課がありますが、基本的に中学校やイベントに参加するだけで、「集客方法」を考えることはありません。

 そして集客をするには、まずターゲットを決めなければなりません。「どんな年齢でも、どんな目的でも入れる個人塾」では、包括的に生徒を募集している大手塾にお客様を取られてしまいます。

さらに、お客様自身が「自分のニーズを満たしてくれるぴったりの塾」を求めていますので、「なんでもできる塾」では印象が弱くなってしまいます。

 今回は、計10年間教師として教壇に立っていた私が「語学スクールBRIDGEST【ブリジェスト】」を立ち上げるために、最初に行った「ターゲットの決め方」についてお話しいたします。

『教員』が『スクール起業』を考えたら最初にターゲットを決める

どんなスクールを作りたいのかコンセプトを決める

ターゲットを決めるというのはとても大切です。

駅の演説で政治家が

「これはみなさんにとってとても大切な話です」

と言うのと、

「これは佐藤さんにとってとても大切な話です」

と言うのでは、どちらが振り向いてくれる確率が高いでしょうか?

極端ではありますが、当然後者の発言をすれば、そこにいる佐藤さんはみんな振り向くことでしょう。

自分のスクールのコンセプトを固め、ターゲットを決めるというのは一番最初に行うべきことなんです。ターゲットの幅が広すぎると、専門性も高まりませんし、特色がないスクールになってしまいます。

 スクールと言っても現在様々な種類のスクールがあります。

ターゲットが小学生の学習塾だけでも、「そろばん教室」「算数教室」「記憶教室」「中学受験教室」など様々なジャンルがあります。

「自分の強みはなんなのか」、「どのようなスクールを経営したいのか」、まずは自分のスクールのジャンルをじっくり考えましょう。

自分の強みで決める

 まず、私のケースをお話しいたします。私は中学、高校で英語科教員として働いていました。自ずと私がスクールを立ち上げようとしたら「英語スクール」となります。ただ、大切なことはどのようなスクールにするかです。

 英語スクールと言ってもたくさんのジャンルがあります。

  • 英会話教室
  • 学校授業の復習をする英語塾
  • ビジネス英語スクール
  • 資格専門スクール
  • 翻訳・通訳学校

 さらに対象年齢やレベル・教授方法を掛け合わせるとかなりの種類になります。

 別の投稿で理由はご説明しますが、私は「英検®︎」と「TOEIC®︎」を専門としたスクールを立ち上げるために、10年間この2つを研究し、英検®︎では1級に毎年合格し、TOEIC®︎では満点も取れるようになりました。私はこの2つを専門とするスクールを立ち上げたかったので、この分野において絶大なるアピールとなる「権威性」を示すために、自分自身も高い成績を残せるよう努力してきました。

 さらに、大学の頃から研究してきた「第2言語習得」を応用した科学的トレーニングとマンツーマンのコーチングスタイルを掛け合わせることで特色を出しています。

 このように、自分がこれまでに教員として働いてきて、続けてきたことや専門性を生かしてスクールのコンセプトを作る方法もあります。

 成功している私の先輩は、もともと小学校の教員でしたが、虫の分野と科学分野が得意だったので、教科書に載ってはいるが、なかなか学校の授業では取り扱ってくれない「実験をする理数系塾」を経営しています。このように、大手や周りのスクールではやっていない特色を出すと、それに共感した人やもともと需要を持っている人が興味を持ってくれやすくなります。

スクールを開業する地域の需要で決める

 出店をする地域によって特色が異なります。

  • 小学生が多い地域
  • 中学高校が近くにある地域
  • 駅が近い地域
  • 住宅街
  • 商業地域
  • 高齢の方が多い地域
  • 田舎な地域
  • 海沿いのへんぴな地域

 どの地域を選ぶかで、求められていることの割合が変わってきます。

 例えば、地域により世帯収入は上下します。私のようのマンツーマンのスクールは、1人に費やす時間が多くなるため、多くの人数を募集することができません。そのため1人当たりの単価を高く設定しています。もちろんそれだけ価値のあるものを提供できるという自信があるので続けていますが、通うことができるのは年収がある程度の方のみです。

 地域によっては、そこまでの金額が払える方がいない場合もあります。違う場所で同じことをやったとしても、需要がなかったら集客に困るでしょう。

 世帯収入が低い地域に出店する場合は、グループレッスンにし、一人あたらりの単価を安くする必要があります。

 まずは出店する予定の地域がどのような地域なのか調べる必要があります。私は自分が出店する場所の周辺を何度も歩いたりして、「周りには何があるのか」「どのような住宅が近くにあるのか」「子供の数」などを調べました。

必要な生活費から逆算して授業料を決める

 当然教員を辞めて起業するのだから、収入が上がることも期待すると思います。自分が月にどれだけの収入が欲しいのかを計算し、スクールの収容人数を考慮して1人当たりの授業料を決めます。

 その時に、授業料によっては「マンツーマン指導なのか」、「グループ授業の方が良いのか」などを決めなければいけません。料金によって「できる」「できない」があります。

 まずは設定料金で、コンセプトを絞り込むこともできます。

「スクールのコンセプトを決め方」まとめ

  • これまで培ってきた専門性を生かした特色にする
  • 教室をオープンする地域性で決める
  • 生活費から逆算して決める

どれか1つの決め方で決めるより、2つ以上を掛け合わせることで、より差別化を図ることができます。なるべく複数の軸で考えた方が成功する確率を上げることができるでしょう。

ターゲットを決める

 スクールの特色を決めたら、次にターゲットを決めます。ターゲットの決め方は以下の4点です。

年齢(学年)でターゲットを決める

 受験を意識した塾を立ち上げるとしても、小学校受験なのか中学受験なのか高校受験なのか大学受験なのかで内容は大きく変わってきます。

 極端な例ですと、大学受験を意識したお客様が塾の見学にきた時に、小学生ばかりだったら入りたいと思うでしょうか?

 学生がターゲットの場合、ある程度対象年齢を狭めて、客足が安定したら徐々に広げていった方が結果的にうまくいきます。

お客様の目的に合わせてターゲットを決める

 私の例ですと、上記でも述べたように英検®︎とTOEIC®︎を専門としているので、自ずとターゲットはそれらを目的としている方達になります。

 あとはそろばんだったり、私と同じような資格試験を目的する場合はターゲットの設定は容易かもしれません。

 難しいのが、学習塾です。特に多教科を教える学習塾は最も多いスクールジャンルですので、どうしても新規で参入した場合、長年地域密着型でやっているところや、大手の塾にはかないません。例えあなたの教える力が上回っていたとしても、お客さんが来なければそれを証明することもできません。

 経営者にとって、創業当初に最初の1人を呼び込むことが最も高いハードルです。特色がなければ、その1人すら来てくれることはありません。お客様は知名度もあり、幅広い年齢層、レベルに対応している大手の塾へ行ってしまうことでしょう。

 もし多教科を教える学習塾にするのならば、他の塾とはどんなところが違うのか、知らない人でもすぐに理解できるような特徴を設けましょう。

 例えば、「計算力を高めたい人のための塾」、「読解力を高めたい人のための塾」、「論理的思考力を高めたい人のための塾」などです。正直これでも幅が広すぎると思いますが、ただの「学習塾」をオープンするよりはずっとターゲットが絞られるため、興味を持ってもらえる可能性は高まります。

授業料でターゲットを決める

 授業料を安くすると集客は成功します。ただ、設けを考えると人数も多く集客しなければいけません。

そしてこの方法では成功する可能性が少ない理由が3つあります。

大手の資本には勝てない

 どんな業界でも大手のやり方は同じです。

それは「シェア率を上げること」です。

 集団心理を応用した方法です。多くの人が使っていれば、例えそうでなかったとしても、それが良いものなのだと勘違いをします。

「みんなと同じ行動を取ることが正しいこと」と判断してしまう古来から人間に備わった性質を応用しています。

そしてこの「シェア率」を奪うために、大手は価格を他よりも安くできます。大勢の社員もいますし、大きな建物もあります。例え儲けが少なくても、個人塾とでは比べ物にならないほどの財力があるので問題ありません。

そのうち価格競争になり、大手より安くすることができなくなります。そうなれば、お客様は大手に流れます。いずれ個人塾は潰れてしまうでしょう。そうなれば、最後まで個人塾に残っていた生徒も大手が回収し、「シェア率」を奪うことに成功します。

シェアさえ奪ってしまえばあとは値段を適正な価格に戻して、利益を取れるわけです。

安さを売りにしてしまえば、大手には絶対にかないません。金額ではなく、質や特色で差別化をはかり、勝負しましょう。

世帯収入の低い家庭を扱うため、滞納や問題行動で悩むことが増える 

世帯収入の低い家庭は、月謝を払える能力が低いため、しばしば滞納してしまうケースがあります。

それが大勢いたらどうでしょう?

月謝の取り立てを行わなければならず、毎月授業料の徴収に頭を抱えることになります。

 さらに、問題行動を起こす子供の家庭は世帯収入が低い傾向があります。塾内で他の生徒に嫌がらせや問題行動が起きれば、当然他のお客様は退会してしまうでしょう。

そのうち「あの塾には問題行動を起こす人がいる」と悪評が広がり、その後の集客にも影響を与えます。

大量の生徒を抱えなくてはいけないため、運営が火の車

 一人当たりの授業料を安くすれば、赤字を回避するために沢山の生徒を集客する必要があります。そのため、事務作業や手続き、課題のチェック、授業の予習の数が増え余裕がなくなります。一人一人に注ぐ時間も分散されるため、お客様との十分なコミュニケーションが取れず、満足度も下がる恐れもあります。

唯一の成功例

 上記の3つの理由により、低価格を売りにターゲットを決めることはあまりお勧めしません。しかし、1つだけ成功例を知っていますので紹介いたします。

 その塾の塾長は低価格帯の授業料ですぐに生徒を確保することができました。低価格帯の塾では儲けが少ないことがほとんどですが、その塾長は両親から譲ってもらった家の半分を教室にしていたため、家賃がかかりませんでした。

 お客様の年齢層は幅広かったのですが、高校生は小学生がわからないところを教えてあげることが義務づけられていたため、個人からの質問は高校生が対応していました。その分時間に余裕ができ、その塾は今年で7年目を迎えています。

 このように恵まれた環境があり、自分が余裕なく働かなくても良い制度を設けることができるのなら、世帯収入の低い家庭をターゲットにしても勝算はあるかもしれません。

まとめ

 今回は、塾のコンセプトを決め、ターゲットの絞りかたをお話ししました。どちらを行う場合も、1つの観点ではなく、複数の観点から決めるようにすると、「自分だけのコンセプト」「自分だけのターゲット」を定めることができます。

 初めに「どんなスクール」で「どんなターゲット」なのかをはっきり決めておかないと、自己研鑽を含め準備に無駄が生じ、時間がかかってしまいます。教員は多忙ですし、なかなかプライベートの時間を確保するのが難しい職業です。時間は限られているため、対策も必要最低限が良いでしょう。

学習でも同じです。他教科で100点を取るよりも、1教科に絞った方が遥かに早く100点を取ることができます。

コンセプトやターゲットを定める行為は、教科を絞る行為と似ています。

まずは自分のスクールの未来像を完成させてください。

大変ですが、これが最も楽しい準びです。ワクワクしながら頑張ってください。

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