時間外労働、モンスターペアレント、パワハラ、過剰な生徒指導など学校教員は様々な問題に直面しながら働いています。中には心を病んでしまって休職、最悪退職し、しばらくの間働けなくなってしまう人も少なくありません。
筆者は教員として10年働いてきましたが、学校という社会の中には、現代では考えられないような風習があり、返って教育のマイナスになっている部分も多々目の当たりにしてきました。
本来学校というのは、社会性を学び、他人を尊重し、勉学に励む場所です。しかし、多くの学校ではそれが上手く運営できていないのが現状です。そして、志を持って教員になった方々が日々そのギャップに悩み、ドロップアウトしてしまうこともあります。
ただ、その中には教えることにとても長けている方々も大勢いることを知っています。もし、「教える」という環境が違ければ、その才能を発揮できる人は多いのではないかと考えています。
そこで今回は、実際に教員を10年間勤め、独立してスクールを立ち上げた筆者が、教員から転職を考えている方に「塾を経営するメリット」をご紹介いたします。
「教員」が「転職」を考えたら「塾経営」をおすすめする理由6選
「教える業務」においてアドバンテージがある
学校でも塾でも「勉強を教える」業務は変わりません。むしろ、学校教員をやっていたほうが経験値も上がるため、かなり有利になります。まず、教える業務においてのメリットを挙げたいと思います。
塾には来ないような幅広い生徒対応の経験を積める
そもそも塾に通うような人は、少なからず勉強に前向きです。だからこそ、塾に通う子が塾の授業に真面目になることは当たり前のことです。しかし、最初から塾で働いている人の中には「みんなが真剣に私の授業を聞いてくれるのは、自分の指導力があるからだ」と勘違いをしてしまい、自分の成長を止めてしまう人もいます。
どれだけ興味のない人間に興味を持たせることができるかが指導者としての力量です。
「勉強に全く興味関心を持たない生徒に、どうしたら興味を持ってもらえるか」
教員以上にこのテーマを深く考える職業はありません。塾で指導をするにしても、教員を経験し、このテーマを深く考えたことがあるのなら、それだけで指導力に差をつけることができます。
さらに、世の中には塾に通っていないのにとんでもなく成績が高い天才児もいます。高校からはレベルで分けられてしまうので、高校教員では経験できない方もいますが、筆者のように公立中学校の教員の経験がある場合は目の当たりにした方もいるのではないでしょうか。このような生徒も同様に塾では指導する機会が滅多にありませんので、仮に塾で受け持ったとしても、経験がある場合とない場合では対応も変わってくるでしょう。
膨大な人数を指導する
これは学校の規模にもよりますが、教員は平均すると200人もの生徒を一度に対応しなくてはなりません。塾で働いていて200人も指導する機会はほぼないでしょう。そもそも一つの塾に200人以上の生徒がいることが珍しいです。都会エリアの予備校くらいでしょう。
これだけ多くの生徒のマネジメントをしながら授業をする機会は教員以外ではなかなか経験することはできないでしょう。
膨大な授業時間
現在は教員になりたいと思う学生が少ないため、教員一人当たりの授業数が多くなっています。そのため、教材研究が間に合わないほどの授業数をこなさなくてはいけません。それが良いか悪いかはともかく、授業ではその場でのアドリブ力も必要とされるため、対応力が付くことはいうまでもありません。
学校情勢に詳しくなる
学校業務の中には、教員をやっていなければ決して知ることができないことがたくさんあります。その情報を知っているだけで、他の塾や塾講師に差をつけることができます。ここではどのようなことで有利になるのかを説明いたします。
成績の付け方、定期試験の内容がわかる
学校教員の成績の付け方は、公になっているようでなっていません。そもそも基準が明らかではないからです。明確な基準を作ってしまうと必ず「1」が出てしまいます。しかし、「1」をつけられてしまうと、進路にかなりの影響を及ぼすため、「1」をつけてはいけないという暗黙の了解があります。そのため基準は絶対に明かしません。聞かれた場合は曖昧に答えます。
そのことを熟知していれば、自分の塾生たちにどうすれば成績を上げることができるのかを伝えることもできます。
さらに、定期試験はどんな教員が作ってもほぼ同じような内容になります。そのため、ある程度経験を積んだ教員なら、テストに出る部分をある程度把握できるでしょう。定期試験対策をやるにしても有利になることは言うまでもありません。
入試の裏側を知れる
実は入試情報の中には、塾でも知ることができないものもあります。ここで筆者がそれを言ってしまった場合、「秘密の保持」を破ることになるので控えさせていただきますが、それを知っているか知らないかで、合否に響くものもあります。
学習塾では合格実績が次の生徒募集に影響する大事な要素です。少しでもその合格実績を伸ばせるのだとしたらそれはすごい武器になります。
教員の知り合いが増える
教員の知り合いが多いこともとてつもない武器になるでしょう。学校でのタイムリーな問題や公に出ない情報を教えてくれる場合もあります。
さらに、自分の塾を紹介してくれることもあることでしょう。教員に知り合いが多いことは、あなたが塾を経営する上でとてもプラスに働く可能性が大いにあります。
しかし、時にはマイナスになることもあります。教員の中には辞めたいのに、勇気がなくて辞めれない人もいます。そんな人は、辞めたあなたを非難する場合もあります。また、勤務校での人間関係が良くなかった場合や、恨まれることをしていた場合も同様です。
教員仲間にあとで睨まれないよう上手に退職しましょう。
たくさん失敗できる
私立でない限り、成績にシビアになることはありません。私立は成績や満足度が全てですので、進学実績においてはピリピリしています。しかし、公立は超進学校でない限り私立ほど厳しくありません。そのため、ある程度実験をすることもできます。その実験を重ねブラッシュアップしていくことで、自分の指導力を高めることができます。
しかしそれが塾の開業者だったらどうでしょう。もし失敗したら、経営を続けていくことができなくなる場合もあります。なるべく開業したら失敗を減らせるように、教員時代にたくさん失敗しておきましょう。
ただし、筆者の言う失敗は、「全力でやって上手くいかなかったこと」を指します。手を抜いて良いという意味ではありません。手を抜いて上手くいかなかったことを筆者は失敗とは思っていません。
保護者からある程度の認知がある
筆者もそうでしたが、教員が独立し、スクールを立ち上げると、保護者の中でも話題になります。そのおかげで最初の生徒を確保することができました。さらに、保護者の間で良い噂が広まると、口コミで生徒が入会してくることもあります。
最初から塾などで働いて独立するのと、学校教員が独立するのでは、後者の方が圧倒的にインパクトがあります。開業者にとって、開業当初にお客様を確保することはとても大変なことです。ある程度保護者の間で話題になることで、開業時にお客様がついてくれる可能性を上げることができるでしょう。
ただし、保護者に悪い印象を持たれてしまっていると、話題にもならず、むしろマイナスになりかねません。日頃から保護者からの印象は良くしておきましょう。
タダで教材研究がやり放題
教員をやっていると、出版社の方から副教材として教材のサンプルを送ってもらえます。自分が気になる教材は、出版社に電話すればすぐにサンプルを無料で送ってもらえます。
自分が開業した際にどんな教材を使うかはとても重要なことです。運営するスクールのジャンルにもよりますが、たくさん教材を知っていて損することはないでしょう。
開業してからは、気になる教材や本があっても自腹で購入しなくてはいけません。何冊も購入すると結構な金額になります。しかし、学校ならタダで手に入れることもできます。これは学校教員の特権ですので、ぜひ活用してください。
終わりに
以上が『教員が転職を考えたら塾経営をおすすめする理由』です。
現在転職しようか悩んでいる場合は、塾の経営を視野に入れてみてはいかがでしょうか。その際は、「辞めるから適当にやる」のではなくて、塾を開業した際に役に立つものは十分に利用してから辞めるようにしましょう。
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